伊坂幸太郎著「夜の国のクーパー」読了感想


伊坂幸太郎氏が書いた「夜の国のクーパー」を読んだ。彼が書いた10冊目の描きおろし長編小説で、ラストには彼らしい展開が待っている。彼が書く長編小説のラストで不快になることはまずない。切なくなるラストもあるが、それでも読後は爽やかな気持ちになれる物語を書く彼の小説には私も魅了されている。あらすじは下記の通り。

この国は戦争に負けたのだそうだ。占領軍の先発隊がやってきて、町の人間はそわそわ、おどおどしている。はるか昔にも鉄国に負けたらしいけれど、戦争に負けるのがどういうことなのか、町の人間は経験がないからわからない。人間より寿命が短いのだから、猫の僕だって当然わからない――。これは猫と戦争と、そして何より、世界の理のおはなし。どこか不思議になつかしいような/誰も一度も読んだことのない、破格の小説をお届けします。ジャンル分け不要不可、渾身の傑作。伊坂幸太郎が放つ、10作目の書き下ろし長編。

このあらすじには書かれていないが、猫以外にもう1人主人公がいる。彼は奥さんに浮気をされて途方に暮れていた所、人間と会話できる猫のトムと出くわす。この2人の視点で入れ代わり立ち代わり物語が展開されていくのだが、これも彼らしい物語の進行の仕方だ。

基本的にはトムが現在の状況に至るまでの流れを話すことになるのだが、物語の鍵となるのが”クーパー”の存在だ。クーパーは非常に大きい生き物で、トムのいた国ではクーパーを討伐するための部隊が毎年編成される。そして、クーパーと戦った兵士は透明になって戻ってこれないのだ。

彼の物語はいつも2重になっている。普通に進行している物語の裏にもう1つ隠された物語や事実があるのだ。今まで常識だった世界、頭の中で思い浮かべていた世界が一瞬にして崩される、そんな仕掛けを彼はいつも用意している。今回もラストには今までの常識が覆される展開になった。

小説を読んでいる際にその情景を思い浮かべやすい作品でもあるので、興味のある方はぜひ読んでいただきたい。

2012年9月2日 投稿:エイドギース




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