米澤穂信著「ボトルネック」読了感想(ネタバレ有り)


米澤穂信氏が書いた「ボトルネック」を読んだ。読んだのは、もう2年ほど前になるので、少しうろ覚えの部分もあるが、大きな影響を与えた作品なので紹介したい。

ボトルネックのあらすじとしては、よくあるパラレルワールドの物語だ。主人公の世界では姉が流産か何かで生まれなかったのだが、パラレルワールドでは姉がいて、その代わり主人公が存在しない世界となっている。それ以外は何も変わらず、全く同じ時間で同じ環境なのだが、パラレルワールドの世界は本来の世界とは全く異なっていた。

あらすじ

懐かしくなんかない。爽やかでもない。
若さとは、かくも冷徹に痛ましい。
ただ美しく清々しい青春など、どこにもありはしない。
青春ミステリの旗手、最新書き下ろし長編

読んでいて、非常にツラくなる内容だった。活発で精力的に生きている人間がこうも世界を変え、行動しないことがこうも世界に悪影響を与えるのか、と思い知らされた。行動しないことは決して罪ではないと思っていたが、行動する人と比べてしまうと非情な程に大きな違いがそこにはあったのだ。

私は人間関係を築きあげるのが得意ではないため、積極的に人と関わりを持つことは少ないのだが、「ボトルネック」ではこうした態度を断罪された気分になった。2年前に読んだ本にもかかわらず、今でもトラウマになっている。

人は一人では生きていけない、とよく言われる。どんなに無関心で事なかれ主義であろうと、人には支えられているのだ。逆に言えば、どんな人でも人に頼られて支えにならなければならない時もあるということになる。にも関わらず、主人公のように他人に対して無関心で支える努力をしない人は、結局のところ社会にとって悪影響しかもたらさないということが、この小説内で描かれている。

この小説は、人付き合いが苦手な人にとって絶望しか待っていない小説かもしれない。しかし、この小説を読んで他人と関わりを持とうと変われる人もいるのではないだろうか。姉目線になってポジティブに考えると、少しでも積極的に関わりを持つことで世界は今より好転する、とも考えられる。米澤氏が本当に言いたかったことは、このことではないのか。

人間関係が苦手で関わるのを控えようと思っている人には読んでもらいたい。今までの生活を変えるきっかけになるかもしれない。読んでいる間はツラく重かった物語だったが、2年が経過し思い出が美化されつつある今ならこう思える。”世界は積極的に関わりを持とうとしている人にとって、こうも優しいのだ”

2012年9月3日 投稿:エイドギース




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